■ロシア軍レーション完食レポート■

 ここ数年、戦闘糧食ネタのウェブサイトや書籍をよく見かけるが、アナハチでもとりあえずやってみることにした。しばしば「ロシア宇宙軍レーション」として紹介されるものが手に入ったのである。ただし、パッケージにはどこにも「宇宙軍」とは書いてない。これ自体、モスクワのアウトドア専門店で買えるという情報もあり、果たして純粋な軍用レーションと定義していいものかどうか迷うところでもある。
  まぁ、考えてもしょーがないので、とりあえずパッケージを開けて食う。なお、これらレーションには賞味期限があるので、もし同様のものを入手されたとしても、喫食には十分注意すること。食中毒その他、いかなる損害が発生しても当ウェブサイトは一切の責任を負わない。 いや実際、完食は大変だったよ……。
 右端はインストラクション。パック表面にも素っ気なく印刷されているが、ИРП−Б(IRP−B)というのがこのレーションの名前。[завтрак-朝食][обед-昼食][ужин-夕食]の3つのメニューが表記されているので、これで一日分である。ちなみにロシアでは今でも昼食が正餐とされ、一番豪華な食事をとる文化がある。最近ではその習慣も変わっているが、このメニューを見る限り、やはり昼が一番豪華な感じだ。
 
[завтрак-朝食](2番目に大きなポケット)
 乾パン1パック。肉料理の缶詰1コ。乾燥ミルク1パック。インスタントコーヒー1パック。砂糖2パック。ドロップ型キャラメル2コ。キャラメル1コ。総合ビタミン剤1パック。簡易コンロ。紙ナプキン1枚。おしぼり1パック。マッチ6本。プラスチックスプーン1コ。クリップ1コ。乾燥剤1コ。

 

[обед-昼食](1番大きなポケット)
 乾パン2パック。肉の缶詰1コ(注:このセットには何故か2コ入っていた)。肉と野菜料理の缶詰1コ。トマトソース1パック。ドライフルーツ1パック。粉末ジュース1パック。砂糖3パック。紙ナプキン1枚。おしぼり1パック。乾燥剤1コ。
 
[ужин-夕食](1番小さなポケット)
 乾パン1パック。魚の缶詰1コ。固形食糧1コ。ジャム1パック。砂糖入り紅茶1パック。紙ナプキン1枚。おしぼり1パック。乾燥剤1コ。


 さて、ここからは個別のメニューのレポート。本来なら朝・昼・晩と規定通りに食べるべきなのだが、とにかく量が多いので、それぞれバラバラにレポートする。また撮影にあたっては、料理の中味がわかりやすいように通常の食器なども使っている。

хлебцы-армейские-乾パン
 直訳すると「軍隊風パン」。 日本の乾パンに比べると味がほとんどしない。塩気もなし。包装が甘いのか少し湿気ってしまったかもしれない。あまり美味とは言えないが、外国製のクラッカーはどれもこんな味という気もするので、ロシア製だからことさら不味いということではなさそう。1パック8枚で50グラム。包装には387キロカロリーと表示がある。
сахар-砂糖
 このレーションで異様なのは、とにかく砂糖が多いこと。甘い飲み物やお菓子もあるのに5袋もある。どう考えても数が合わない。シベリアなどの極寒の地で、いかにスタミナを維持するかが重要視されているのだろうか。余った分はとりあえずポケットに入れておいて、非常時になめたりするのかもしれない。余ればの話だが。
консервы-мясные-肉料理の缶詰
 今回は事前に開封した上で、湯せんの要領で火を通した。実際には熱湯に放り込んでしばらくすればおいしく頂けると思う。冷えたまま食べるのはキツそうだが、それは軍用レーション共通なので問題にはしないことにする。  
 料理名はговядина натуральная。直訳すると「自然な牛肉」となるが、中味はなるほど塩ゆでした牛肉。シンプルな料理だ。肉そのものから出たブイヨンに赤身の肉が浮いている。おそらくスネ肉と思われるが、じっくり火が通っていて、やわらかい。それなりに美味と言って差し支えないレベル。しかし、朝からこれかい。
консервы-мясорастительные-肉と野菜の料理の缶詰
 料理名はкаша дорожная。「旅人風カーシャ」とでも訳すのだろうか。米や大麦、肉、野菜などが入った雑炊のようなものだが、実際に食べてみると米と牛肉ばかりが目立つ。米は細長いインディカ米でなく、日本人にもおなじみのジャポニカ米。牛肉と野菜のブイヨンにご飯とコンビーフを混ぜれば、かなり近いものが再現できると思う。  
 味付けはシンプルなので付属の[соус томатный-トマトソース]をかけて食べる。このトマトソースもケチャップとウスターソースを1対1で混ぜたような感じ。ソースをかけると味はかなり濃くなるが、やはり、それなりにおいしいと言っていいと思う。

фарш-ファルシー
 ひき肉というか、ミートパテみたいなもの。соситочныйという表記があるが、これはソーセージの意味。確かに味はソーセージだった。自衛隊のレーションにもある缶詰ソーセージと非常によく似た風味。皮を取った中味がそのままパッケージされていると思えばいい。
 ただ、缶そのものはアルミ製で変形しやすい。なお、説明書には100グラムの缶詰がひとつとあるが、今回のセットには75グラムの缶詰が2コ入っていた。なんとなく無理やり詰め込んだ感じ。これと上述のカーシャを一度に食べるとなると、かなりのボリュームである。やはり昼食が正餐なのだと思う。

консервы-рыбные-魚の缶詰
 ラベルのсельдьはニシン。ロシアでもよく食べられている魚。開けると、狂気の缶詰シュールストレミングに近い外観にギョッとなるが、実際はオイル・サーディンに近い。塩味はほどほどで味はサバ節とかナマリ節のような感じ。日本人なら醤油の一滴も欲しいところだが、ロシア人もタマネギぐらいあれば……とか思いそう。  
 賞味期限はさすがに長く2年。しかし、製造年月日がよくわからない。ロシアの缶詰表記の一般的な見方は、1行目に製造工場のナンバー。2行目に製造年月日を打刻するそうだが、魚の缶詰だけは逆とか、年号は入れないとか、よくわからない。唯一わかったのは種類表示で、М(肉類・乳製品)Р(魚類)К(野菜・果実)の3つがある。この缶詰はニシンなのでРの表記。
 
концентрат пищевой брикетированный -固形インスタント食品
 горох отварнойというのは茹でたエンドウ豆のこと。てっきり固形スープの類と思ったのだが、説明書を見ると「かみ砕いて水と一緒に飲む」の一文が。どうやらロシア版のカロリーメイトみたいなものらしい。開封してみると粉っぽいカタマリが出現。60グラムで約400キロカロリーあるから、ポケットサイズの非常食としては便利かもしれない。
 かじってみると、なるほど確かに豆を煮出したスープのような味がする。味はそれほど濃くないが、粉っぽいので水は必須。上述の魚の缶詰と合わせて夕食だから、いきなりつつましくなっている感じである。なお100円硬貨は大きさの比較に置いたもの。
 
повидло-ジャム
 フルーツジャムはそれほど甘みが強いわけではない。中味はアンズとかリンゴとかイチゴとかがごちゃまぜになっている感じで、総合すると干したナツメヤシに近い。100グラムあたり224キロカロリーと表記されているが、実際の内容量は45グラム。 写真では乾パンにつけて食べているが、ロシア人的にはパックから直接吸いながら紅茶を飲むのだろうと思う。ロシアンティーというとジャム入りを連想する人が多いが、ロシア人に言わせると「邪道」あるいは「砂糖がない時の非常措置」とのこと。
 

кофе растворимй-粉末インスタントコーヒー
 個人的にはあまりコーヒーを飲まない方なので、違いがわからないが、とりあえずコーヒー。ロシアになってからのレーションなので、ネスレとかの輸入品をそのまま使ってたりするのかもしれない。

напиток молочный сухой-粉末ミルク
 袋の表記はнапиток молокосодержащий。裏面の説明には 「カ
ップ1杯分のお湯に溶かして飲む。好みに応じてコーヒーを入れてもよい」とある。いわゆる料理番組などに出てくる1カップという単位は、通常200ミリリットル。ロシアでは220〜250ぐらいとのこと。
 ソ連軍の空挺部隊用飯ごうに入れて飲んでみる。溶け具合はそこそこでダマなどは目立たない。ただ妙に茶色っぽい色なので戸惑う。味は当たり前だがホットミルク。粉っぽさは仕方ないか。物足りないので砂糖сахарを加えると、まぁイケる。

концентрат напиток インスタント飲料
 見ての通り粉末ジュース。正確な調理方法が書いてないので、濃度は好みで調節しろということか。とりあえず180ccの冷水で溶かしてみたが、粉末の一部が固まっており、完全に熔けきることはなかった。事前にパッケージをよくもんで粉末状態にしておくべきだったか。色や味はレモン風味だが、酸味はほとんどなく、甘い。
 
фрукты сушеные-ドライフルーツ
 小粒のドライレーズンが入っていた。パッケージの匂いが移ってしまっており、風味がいささか損なわれてしまっている。味そのものはそれほど悪くないが、とにかく甘く、これだけの量を一度に食べると胸焼けする。わずか20グラムなのだが。
 
чаи-紅茶
 てっきりティーバッグかと思ったら、結晶状の粉末紅茶だった。洗ったばかりで水滴が残るカップに入れると紅茶のいい香りがする。紅茶のキャンデーみたいな感じか。しかし、熱湯を入れたら香りが飛んでしまった。あらかじめ砂糖が入っており、とても甘い。ジャムと一緒に飲む必要はないと思うが、実際どうなんだろうか。
карамель-сибирская
 直訳するとシベリアのキャラメル。なにがシベリアなのかわからないが、ブランド名かもしれない。中味はやわらかく、なかば溶けていた。しかし見てくれのわりに面白い味。あるいは白樺の樹液とかが含まれているのかもしれない。口の中であっという間になくなった。
 右端は[карамель-леденцовая ドロップ型キャラメル]。ハッカ風味で味はまぁまぁ。見かけは洗練されていないが、ロシアのお菓子はアメリカの毒々しいモノより、日本人の口に合う。
поливитамины-総合ビタミン剤
 中味は黄色い球体。あまりの不気味さにさすがに飲むことはためらわれる。まぁ、ポポンSとかアリナミンとかそういう類のモノだと思うが、ビタミン剤とはいえ海外の薬品関係には注意する性格なのである(食べ物にも食品添加物が入ってるだろうから無意味なんだけど)。
[道具類]
спички-マッチ。ложка пластмасс-プラスチックスプーン。вскрыватель-クリップ。 акватабс-乾燥剤。いずれも見た通りのもの。クリップはバリが多すぎて、ほとんど役に立たない。そもそもなにを留めるものなのか今イチわからない。乾燥剤はもしかすると脱酸素剤かもしれない。どっちにしろ食べられないが。
 
разогреватель-固形燃料コンロ
 野外用ということで、簡易コンロがついている。アルミ製のパネルを曲げてゴトクを作り、中に固形燃料を入れるのだ。固形燃料は4つある。
 
 せっかくなので実際に試した。
 夜。気温20度。あらかじめ冷蔵庫で約10度前後にした冷水250ミリリットルを沸かしてみる。ソ連の空挺部隊用飯ごうをナベ代わりにしたが、安定はすこぶる悪し。ちなみにこういう時は周囲を遮蔽すると熱効率がグンと良くなる。  
 で、いざ点火。意外とメラメラよく燃える。でもって固形燃料の一部が溶け出してコンクリートブロックも少し燃える。室内では絶対にやらないこと。でも10分程度で、かなり熱いお湯が出来た。コーヒーや紅茶を作って身体を温めるのには十分。しかし、空挺飯ごうは素手では触れないほど熱くなる。  
 ちなみに昼間でも実験した。気温24度。普通の水道水で20度。しかし、風の遮蔽がうまくいかなかったので固形燃料は6分で燃焼終了。お湯も50度程度だった。  
 重ねて言いますが、絶対に室内ではやらないこと。屋外では周囲の可燃物に注意し、必ず消火用の水を用意すること。万一事故が起きても当ウェブサイトはいかなる責任も負いません
салфетки бумажные-紙ナプキン
  メーカーのロゴ入り。量が少なすぎるので、さすがにトイレットペーパーではないと思う。
салфетки гигненич-おしぼり
 香料入りアルコールを染み込ませたウェットティッシュ。

[パッケージに印刷されている表示](代表的なものを抜粋)

・состав-原材料、内容、構成。

・белки-たんぱく質。жиры-脂肪分。углеводы-炭水化物。

・энергетическая ценность-エネルギー量

・ккал-キロカロリー(100グラム当たりの数値を表記)

・срок годности-有効期限(賞味期限)

・●●месяцев-●●ヶ月(36ヶ月とか24ヶ月と表記される) 

 

 なんとかレポート終了。実は完食するのに十数日かかっている。
 なにしろ量が多いのだ。総摂取カロリーは、なんと3191キロカロリー超。特に目に付くのは砂糖の多さ。他にもジャムやらジュースやらキャンデーやらがあるのに、これでもかと入っている。ちなみに
これだけのカロリーをセブンイレブンの弁当で摂取しようとしたら「牛カルビ弁当」と「中華どん」と「ハンバーグ弁当」と「しょうが焼き&チキンカツ弁当」を一日で食べなくてはならない。 
 よくわからないが、ロシア宇宙軍てのはそんなにハードな部隊なのか? やっぱりソユーズロケットとか手で押して移動させるのか? ブースターから噴き出す炎は、中の人の体脂肪が燃えているのか? 

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